「人という字は人と人が支え合ってできている」は新渡戸稲造の言葉

|No.201

 ドラマ『3年B組金八先生』で主人公の坂本金八が生徒に向けて言う言葉としておなじみの「人という字は人と人が支え合ってできている」という言葉。これは元々、明治時代の教育者で、2007年まで発行された5000円札の肖像にもなった新渡戸稲造の言葉である。

 同ドラマの脚本を書く小山内美江子は、鶴見高等女学校出身。仏教系の学校で、校長はよく全校生徒を集めて仏道の話をしていた。「人という字」の話もそのうちの一つで、特に記憶に残っていたという。

 出典は、新渡戸稲造の著書『世渡りの道』。「人という字は、二本の棒より成り、短い方が長い方を支えている。両者は支えつ、支えられつつして、人という字を構成している」と書かれている。

 新渡戸は自分の文章を、家のお手伝いの女性に読んで聞かせることが好きだった。だが、難解な文章がゆえに彼女は「わからない」と答えることも多く、新渡戸は漢字を分解してわかりやすく説明しようとした。「人」の他にも、「武という字に“止”が入っているのは、武器を止めることで無用な争いを避けるということだ」という趣旨の話を説いたこともある。新渡戸は同書の中で「果たして当を得たものであるとは信じ難いけれども」と、話は創作であると付記している。

 なお、「人」の字の本来の成り立ちは、一人の人間が立っている姿を横から見た形が元である。