楽曲の中には、全く演奏を行わないという曲がある。
ジョン・ケージが作曲した曲。1952年にアメリカのウッドストックでピアニストのデイヴィッド・チューダーによって初演された際、第1楽章を33秒、第2楽章を2分40秒、第3楽章を1分20秒で演奏したことから、その合計時間を取って『4分33秒』と呼ばれる。
全3楽章すべてにわたって楽譜に「tacet」(楽章にわたり休止)と書かれているのみで、時間や楽器の指定などもない。
クラシック界では、この曲の目的は「完全な無音ではなく、環境が発する音を楽しむというもの」と解釈されているという。生きている上で完全な無音など存在せず、自然に聞こえるものすべてが音楽になり得るという考えのもとに生まれた作品である。
また、ケージは1962年、『0分00秒』という、楽譜に「独奏として誰が何をしてもよい」と記載してあるだけ曲も発表した。クラシック界では、「日常生活で発せられる音を楽しむもの」と解釈されているという。よって、この指示の本来の意味は必ずしも0分00秒で演奏しなければならないわけではない。
1990年代にドイツのデッテンハウゼンで行われた室内オーケストラの演奏会で演奏された『0分00秒』は、タイトル通り何も演奏されず本当に0分00秒で終わったという。